中学校1年生教材「裏庭でのできごと」について考えていきます。
本教材は、内容項目「A 自主、自律、自由と責任」であり、「自律の精神を重んじ、自主的に考え、判断し、誠実に実行してその結果に責任をもつこと。」とあります。22の内容項目(中学校)の一つ目として例示されていることから、「道徳の最も基本となるもの」と主張している方もいる内容項目です。
ここで、一つ一つの用語を学習指導要領解説をもとに説明します。
上記のことから、健二の言動について考えてみます。裏庭でサッカーをすることを誘われた健二は、「裏庭はまずいよ」と言いながらも、誘われるがままに裏庭に向かいます。割れたガラスの片付けをしようとしつつも、大輔に誘われてボール蹴りを始めます。
健二は、裏庭に行くことを断る自由(選択肢)も、ガラスの片付けを優先する自由(選択肢)もあったはずなのに、他人の干渉にとらわれてしまい、自分の意思を尊重できませんでした。
本教材では、「ガラスを割ったことを言うか、言わないか」に焦点が当てられている
授業をよく見かけます。しかし、本来なら裏庭に行かなければ起こらなかった出来事であり、ガラスの片付けを優先していれば2枚目を割ってしまうこともありませんでした。それらの出来事を考慮せず「ガラスを割ったこと」だけについて考えても、本内容項目の理解を充分に深められないのではないでしょうか。
健二は、鏡を見ながら、「ガラスを割ったことを謝るか」や「大輔に何を言われるか」ということだけを考えていたのでしょうか。「どうして自分は・・・」と、「自主的に判断できない自分」や「すがすがしい心をもてない自分」についても思いを巡らせていたのではないでしょうか。
そう考えると、この場面での補助発問として、「鏡に写った自分は、どのように見えましたか」と尋ねることで、「弱々しい自分」「後悔している自分」などの発言を引き出し、逆説的に理想とする生き方を考えさせることができそうです。
または、「鏡を見ながら考えたことは、大輔のことだけですか?」と、子供たちの発言を限定する発問をすることで、「いや、他にもあるぞ。例えば・・・、自分で正しい判断をできなかった自分について考えている」と、異なる視点での発言を引き出すこともできそうです。
そのうえで、「裏庭に誘ったのも、ボール蹴りに誘ったのも大輔なのに、僕(健二)は一人で謝りに行かなければならないのか」とさらに問うことで、「自らの判断の責任」について気付かせる展開も考えられるでしょう。
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