2023/05/17

役割演技を取り入れた道徳科授業のつくり方


 道徳科授業に役割演技を取り入れる際のポイントを考えていきます。

 上越教育大学大学院の早川裕隆は、「役割演技」を取り入れた道徳科の授業づくりについて、以下のように提案しています。

(以下、一部抜粋)

 内容項目で学習する内容を理解しましょう。授業を構想する際に、まず、解説の内容項目の内容をよく読みましょう。特に、「指導の要点」にある「指導に当たっては」以降を読み込み、用いる教材を通じて特に学習したい内容を明確にしましょう。 

 その上で、どんな活動(教材のどの場面で何を考えるか)を通して、具体的にどんなことを深めるようにしたいのかを明示しながら、それをどのような資質の養成(到達目標とは性格を異とする)につなげるのかを本時のねらいとしましょう。すると、中心発問が明確になり、役割演技を活用して考えたい場面と意味が見えてきます。

(以上)

 大事なことは、「役割演技」は道徳科授業においての「手法」であり、一番大事にしなければならないことは「その授業を通して考えさせたい(気づかせたい)学習内容」を明確にすることだということが、上記のことから理解できます。


《引用参考文献》

『道徳教育 2022年12月号』(明治図書,2022)

2023/05/11

内面的資質を養う役割演技


 役割演技についての学習指導要領解説の記述を読んでみます。

(教材に登場する人物等の言動を即興的に演技して考える役割演技について)単に体験的行為や活動そのものを目的として行うのではなく、授業の中に適切に取り入れ、体験的行為や活動を通じて学んだ内容から道徳的価値の意義などについて考えを深めることが重要である(小学校96頁、中学校97頁)

 この記述をもとに、上越教育大学大学院の早川裕隆は、道徳科授業における「役割演技」を以下のように解説しています。

(以下、一部抜粋)

 道徳授業における役割演技は、単に教科書にある台詞をそのまま表現(再現)することでも、「何と言ったらいいか」「どうしたらいいか」といった、予め想定した特定の台詞や行為を教え、単なるデモンストレーションとして練習(体験)をしたりすることが目的ではありません。内面的資質としての道徳性を養うという道徳科の特性に鑑み、「なぜ、そのような役割が(即興的に)演じられたのか」、役割演技で自発的に演じられた内容を基にしながら、演じられた役割の意味などについて解釈しながら話し合い、意義などを明確化することを通して、道徳的価値についての理解と、生き方についての考えを深めること、役割演技はそれらを融合させながら実現することを目的とする指導方法=手段であることを理解しましょう。

(以上)

 役割演技で大事なことは「即興的な演技に込められた意味を解釈しながら話し合うこと」であり、その話合いを大事にすることが、道徳科授業のねらいである「道徳的価値の理解を深める」ことにつながるのです。


《引用参考文献》

『道徳教育 2022年12月号』(明治図書,2022)

2023/05/10

小学校1年生『二わのことり』を分析する④


 小学校1年生教材「二わのことり」の教材分析④です。今回は、「なぜ、みそさざいは『そっと』うぐいすの家を抜け出したのか」ということに注目します。

 みそさざいの『そっと』抜け出すという行為に対して、大人の視点で考えると「みんなに伝えないといけないのではないか」という意見が出てきます。内容項目が友情、信頼なのに、うぐいすや他の小鳥たちとの友情はどうなるのだという声も聞こえてきます。

 さて、授業分析で大事にしたいのは、人物の行為の「背景」を考えようとすることです。正解はないかもしれませんが、できるだけ多面的・多角的な視点で考えることが大切です。もしかすると、みそさざいには「そっと」抜け出さざるをえない理由があったのかもしれません。

 例えば、このような理由が想像できます。


「そっと」抜け出した理由

みそさざいの根底にあるもの

みんなが楽しんでいるのを邪魔したくなかった。(みんなの笑顔を大切にしたかった)

・他者への配慮

・思いやり

みんなが楽しんでいるのを邪魔したくなかった。(みんなを怒らせたくない、困らせたくない)

・他者への配慮

・みそさざいの生きづらさ

少しでも早くやまがらの家に行きたかった。

・やまがらへの謝罪の思い

・後悔の念

うぐいすや他の小鳥のことを考える余裕がなかった。

・やまがらのことで頭がいっぱい

・後悔の念

 上記のように様々な理由が思い浮かびます。これらの見方には子供たち自身の生活経験が関係してきます。日頃から友達と上手に付き合えていない子だと(2)のような見方をするかもしれません。いつもたくさんの友達と遊んでいる子は(1)の意見を発言するかもしれません。見方(捉え方)は様々ですが、上記の4つに共通していることは「人を傷つけたくない」というみそさざいの思いなのかもしれません。

 一つの事実(行為)に対しての子供たちの見方は多様で、そこに正解はありません。だからこそ、教材研究の段階でできる限り多様な見方を教師が想像することが大事になります。