那須正裕は、著書の中で以下のように述べています。
(以下、参考引用文献より一部抜粋)
子どもたちは毎日の授業を通して、各教科等に特徴的な授業の基本的な流れを帰納的に学び取っています。これを心理学でスクリプトと言います。私たちは、膨大な数のスクリプトを毎日の生活の中で帰納的に学習し、それを上手に活用しているのです。(中略)このような各教科等の授業スクリプトに沿って、子どもたちは先生ごっこに興じているのです。興じると言っても、学習の一環だと理解はしていますから、実に真面目に取り組みます。とりわけ、先生役の子どもたちは真剣そのもので、事前の準備もしっかりやってきます。
(以上)
子供たちは、日々の道徳科授業を通して、授業の展開や、次にどのような発問をされるのかを自然と学び取っているということです。だからこそ、子供たちが予想できないような発問を授業者が考えることが、授業づくりのおもしろさと言えるかもしれません。
また、異なる視点で考えてみると、子供たちが授業の流れを自然に学んでいるのであれば、授業の計画や進行を子供たちに委ねるということも考えられます。上記で紹介した那須正裕は、以下のようにも述べています。
(以下、参考引用文献より一部抜粋)
「特別の教科 道徳」や学級活動は、ほぼ全面的に子どもに委ねて大丈夫です。必ずしも教師が意図していた展開や結論にはなりませんが、心配するほどにはズレてはいかないものです。また、意図した結論に至らなかったとしても、それではいけないのか、いけないとすれば何を目指して授業をしているのかについては、あらためてしっかりと話し合う必要があるでしょう。そういったことも含めて、「自学・自習」は授業とは何かを深く考えさせてくれます。
(以上)
このように、事前の準備や打合せはもちろん必要となりますが、子供たちが授業者となる道徳科授業も可能なのではないでしょうか。
(引用参考文献)
奈須正裕『個別最適な学びと協働的な学び』(2021,東洋館出版社)