2025/08/29

対話のための準備(小さな対話)


 道徳科の授業で子供同士の対話を促したい。そのために、発問や展開、学習活動を工夫する。とてもよいことです。しかし、目の前の子供たちは、対話の土台となる「つながり」が構築されているでしょうか。また、対話をするという経験を積んでいるでしょうか。

 対話をするうえで、学級の子供たちのつながりがとても重要です。安心できる関係性があるからこそ、積極的に話そうとしたり、きちんと話を聞こうとしたりできます。また、これまでに一つのテーマ(発問)に対して深く考えたり伝えようとしたりする経験を重ねていなければ、この場合もやはり対話をすることに躊躇してしまいます。

 そこで、朝の会や帰りの会、予鈴から本鈴の間、授業中の隙間時間などを活用して、年間を通して「小さな対話」を繰り返し行ってはどうでしょうか。その際に、何もテーマがなければ意欲的に話をすることはできません。そこで、市販されているカードなどを使う手立てが考えられます。例えば、「てつがくおしゃべりカード」「シャベリカ」(株式会社アソビジ)などを使うと、その場ですぐにテーマを決め、話を始めることができます。突然にテーマが決まるので、子供たちの対話の瞬発力も育てられます。

 このように、対話の力は授業の中だけで育てられるものではないという前提のもと、全ての教育活動を通して育てるものであるという考え方も大事になります。


2025/08/27

確かな児童(生徒)理解のための対話(3)


 児童(生徒)理解で大事なことは、相手から聞いた話を自分の常識に当てはめて理解しようとしないことです。道徳科授業においても、「教師」という専門的な立場や知識を脇に置き、今目の前にいる子供たちが何を感じ、何を考え、何を伝えようとしているのか、同じように今を生きている一人の人間として、できる限りの興味をもって聞こうとすることが大事になるでしょう。


2025/08/25

確かな児童(生徒)理解のための対話(2)


 いわゆる生徒指導場面において、子供に対して「なぜ、そのようなことをしたのか」と尋ねている姿を見かけます。これは、問題行動における「原因」を尋ねているのであって、「過去」を問うことになります。尋ねられた子供たちは、「だって、〇〇さんが〜」と、思考の矢印を他者に向けてしまいがちです。そして、どれだけ自分の正当性を伝えようとも、その先には「でも、そんなことはしてはいけない」というゴールが見えています。それでは、自分自身の思いや願いを見つめ直すことは難しいものです。

 そこで、「あなたはどうしたかったの?」「どうなりたかったの?」と尋ねてみることにします。これは、問題行動における「願い」を尋ねているのであって、「未来」を問うことになります。「未来」を尋ねられた子供たちは、「本当はいっしょに遊びたかった」「仲良くなりたかった」など、思考の矢印を自分に向けることができ、心の奥にある思いを見つめられます。

 このように、問い方を変えるだけで子供たちの思考の方向性が変わることがあります。これは、道徳科授業における発問でも同じことが言えるでしょう。「◯◯は、なぜこのような行動をしたのか」という発問を、「◯◯はどうしたかったのか」のように変えることで、子供たちは中心人物の願いや、その先にある未来を想像することができます。このように、「未来を問う」ことも発問や問いを考える際の重要なポイントと言えるでしょう。

 


2025/08/22

確かな児童(生徒)理解のための対話(1)


 児童(生徒)理解のためには、何よりも目の前の児童(生徒)のことを知りたいと願う教師の思いが必要です。そのうえで、その児童(生徒)がどのように物事を捉えているのか、どのような世界を生きているのかを、対話を通して理解していくのです。児童自身に教えてもらうのです。
 道徳科の授業においても、時に教師の想定を超える思考や発言が生まれます。そのような思考や発言に対して、「そんな発言はおかしい」「その考え方はふつうではない」と捉えてしまうのではなく、「なぜ、そのように思ったの?」「もっと教えてほしいな」というように、「あなたのことをもっと知りたい」と思える教師が、道徳科の授業では求められているのです。



2025/08/21

道徳科授業と児童(生徒)理解

 よりよい道徳科授業を行うためには、授業者と子供たちとの関係性が重要になります。日頃の学級経営の中で、子供たち一人一人の実態を把握しようとできているか、いわゆる「児童(生徒)理解」が大事なのです。

 発問を考える際にも、「Aさんなら、どのように考えるだろう」「Bさんはきっと〜と考えるだろうから、どのように問い返そうかな」など、子供たち一人一人の思考や反応を想像することで、目の前の子供たちのための道徳科授業が生まれるのです。